第1話: 一歩踏み出してみようよ。-国のイメージはこうして勝手に捏造されている- / モロゾフ・デニス

 
 

日本に一番近い国のはずが・・・

本題に入る前にひとつの実話を紹介したい。あれは他のロシア人の知り合いと一緒に富士山に登っていた時の出来事。

 

7合目辺り、とある中学生団体に追いついた。

 

気が付いたらチビさん達に囲まれ、お決まりの質問を投げかけられた。

 

「兄さん、どこから来た?」

 

あっさり答えるのも面白くないから「どこからだと思う?」と逆に聞いてみた。この質問は15分にわたる「国の名挙げクイズ」の始まりとなった。

 

想像はしていたが、やはり最初の一声は「アメリカ!」だった。首を横に振ると、「イギリス!フランス!ドイツ!イタリア!カナダ!~」と続き、一人の賢そうな男の子は「モナコじゃないの?」なんて答えたりもした。西ヨーロッパの国名が尽きると、「名挙げクイズ」はなぜか中東の国々に移った(おいおい、東ヨーロッパ諸国とすご~くでっかい国、すっ飛ばしてるんじゃね~かよ!)。話はさらにアフリカ大陸に移りそうになったから、ここで方向を正さないとまずいと思い、ヒントを出すことにした。「日本のすぐ隣の国だよ!国境で見れば、日本にいちば~ん近い国だ!」…. しばらくの沈黙を破ったのはさきほどの賢そうな男子だった。

 

困惑しきった表情で僕の青い目と白い肌を不審そうに眺めながら、「兄さんは、か・か・韓国人?」と言い放った。

 

変な帽子を被った酔っ払いおっさんの王国

11年日本で住んでみて、ロシアのイメージは多くの日本人にとってどんなものか、大体分かった。

 

さすがにさっきの話のように「まったく知らない」人はほとんどいないが、偏ったイメージが定着しきっているのは確かだ。

 

ここ数年、金曜日の夜に六本木へ出かけ、不特定多数の人が集まっているバーで軽く飲んで帰る習慣が身についてきて、おかげで様々な人と話す機会が増えた。他愛のない会話の中で、俺がロシア人であることが判明されると、なぜか「えぇ、見えないですね~」とよく言われる。そして話の糸口として今まで培ってきた「ロシアに関する知識」を俺にぶつける人が多い。「年中寒いですよね、ロシアって。みんな、あの変な帽子被ってますよね。」「やっぱりウオッカがないと生きていけないんですか」などなど。

 

様々な人のイメージをまとめると、ロシアは年中雪が降り、常に暗い。

夜中に出かけると熊と遭遇する可能性がある。

ロシア人の男は暗くて怖い。

常にウオッカを飲んでいる。

防寒対策としては耳付き帽子を被り、体を温める為にはコサックダンスを踊る。

ロシア人女性は金髪で「超」が付く美人。

全員子供の頃からバレーとフィギュア・スケートを習う。

代表格はテニス選手のシャラポワ。

要は今にでも噛み付きそうな酔っ払いおっさんと妖精のような美人の国。

それがロシアだ、と。

 

イメージの作られ方

しかし、日本の歴史教科書にはこのようなロシアの「説明」は載ってない。

テレビや新聞もよほどの事件がおきない限り、ロシアの事を大々的に報道しない。

他の国と比べてロシアに旅行・留学・駐在している日本人も微々たるものだ。

それに彼らは帰国後、こんな「とんでもイメージ」を広げるはずがない。

では、どうやって人々の頭の中にはこんなイメージが定着するのか。。。。

 

僕なりの答えは「情報のなさ・情報の操作・情報発信への無関心」にある。

 

「ジャーナリズムは売春とともに世界一古い職業」と言われている通り、日本のマスコミに限らず、全世界のマスメディアは金で情報を売る。言い換えれば、金にならない情報を提供しない。

「情報のなさ」とは、今回の場合でいうと「普通のロシアを取り上げても視聴率が取れない、誰もこんな記事を読まない」から敢えて提供しない事。

「情報の操作」は文字通り、偏った情報しか流さない事。

→「あそこの前大統領は偉いウオッカ好き。酔っ払って、踊って、人の前で倒れる」、「美しすぎるスパイ。やっぱりロシアの女は色んな意味でヤバイ」、「暖房工事のため、真冬の動物園ではアフリカ像を救うべく、ウオッカをバケツで飲ませている」。

この手の情報なら人々は見て、読んで、「日本は色々大変だけど、もっとおっかない国があるもんだね」と小しバカにし、優位性を感じ、安心する。また、ハリウッドの映画もこの偏った情報の定着を助長する。

「アルマゲドン」では酔っ払いのロシア宇宙飛行士は「物を叩けば直る」のシーンはあまりにも有名。そして冷戦時代の名残だろうか、マフィア・テロリスト・オタク系科学者という悪役の設定にはロシア人が多い。

 

そして最後に「情報発信への無関心」だが、これはロシアという国の大問題。

近頃は若干の変化が見られるものの、東京のロシア大使館(外見は刑務所並みに難攻不落)は未だに硬く門を閉じ、決まったイベントの時だけ人を迎え入れる。

数多くの世界遺産を有しながらも日本で観光局を置かない。

ロシアの魅力をアピールするテレビ番組や映画を日本に提供しない。

要するに、「営業が下手すぎる」。

 

こういった要因が絡み合うと、「不思議な国」のイメージが出来上がる。

そしてこのイメージが交流の面だけでなく、ビジネスの面でも大いに邪魔となる。

新興国として位置づけられたロシアには数多くの日本企業が続々と進出するが、新しく派遣される若手の駐在員は「暗くて怖い」ロシア人とのビジネスはどのように進めればいいのか、まったく分からない。

 

でも、ここで重要なことは、と僕は想う。

それは、逆にいち早く既成概念を取っ払う事が出来た企業はうまく立ち回るようになり、そして勝ち組となるとうことだ。

 

これはロシアに限った話ではなく、他国にもそのまま当てはまる。最近、色んな新聞では「若手社員は海外勤務を望まない」と書かれているが、その一因は「イメージが先行している知らない世界へ飛び出す怖さ」にあるではないかと思う。

こんな若手社員には是非覚えて欲しい言葉がある。

 

古代ローマの将軍・政治家のガイウス・ユリウス・カエサルが、紀元前47年に残した格言だ。「VENI VIDI VICI」。来た・見た・勝った。

 

本来の意味が違うが、僕はこの格言をこのように解釈する。

 

「まず現地に出向き、自分の目で確かめる。これこそ成功の鍵だ」。

 

さあ、一歩を踏み出してみようじゃないか、

 

 
 
 
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