第30回:40歳代のアメリカ大学院留学編 -その18(留学体験総括)- / 佐々木大

 
 

ついに今回で最終回となってしまいました。これまでお読みいただいた方々、本当にありがとうございます。

 

今回は、「借金が恐くて留学できるか!」という本連載のテーマも踏まえ、留学体験の総括をしてみたいと思います。

 

2008年8月、兎にも角にもスタンフォードの教育大学院修士課程のすべてのカリキュラムが終了しました。留学生活で学んだことは数知れず、とても一言では言い表せられません。教授から学んだこと、クラスメートから学んだこと、周りのビジネスプロフェッショナル達から学んだことやそのネットワークなど、数え上げたらキリがないほどだと思います。

 

私が専攻したLDT(Learning, Design & Technology)というプログラムは、デザインやITをいかに教育に活用できるかを主眼としています。しかしながら、以前にもお伝えしたとおり、教育大学院ということもあるのですが、学習者の学ぶ過程、モチベーション、効果測定など、教育の本質といった部分を徹底的に叩き込まれた気がします。つまり、その本質部分を理解していなければ、どんなに素晴らしいデザインや最新のテクノロジーを駆使しても、効果的なeラーニングプロダクトは成り立たないというのが、このプログラムのメッセージだったのだと思います。見方を変えれば、この本質を徹底的に理解した上であれば、デザインやテクノロジーは2倍にも3倍にもその効果を発揮することができる可能性を秘めていると言えるでしょうから。

 

「学習者の立場になって考え、教育の本質を理解せよ」なんて誰がどう聞いたって当たり前の話です。でも、私はこんな当たり前の事実を再認識するために高額の留学費用を投資して勉強してきたことになります。LDTの学費は一年間で約4万米ドル。当時のレートでざっと500万円でした。それに加えて生活費などの諸費用がかかるわけですから、その投資額は半端ではありません。しかも私の場合、その費用を借金までして捻出したわけです。

 

私のこの連載のタイトルに「借金が恐くて留学できるか!」というタイトルをつけましたが、結論から言えば、借金してでも行くべきだと確信していますし、行って何ら後悔していませんし、最高にメリットがあったと思っています。

 

私が学んだ専攻分野のことで言えば、私がすべての教育の本質を理解できているとはもちろん思いませんが、少なくとも理解しようという過程の中で、読んだ文献、行った実験・プレゼンテーション、他国にまたがる学生間とのディスカッションなど、その行為自体が、今後の自分の考え方の基本になっていくだろうと明らかに実感できるからにほかなりません。これは日本で普通に仕事を続けていたら、私には絶対に起こり得なかったことだと思っています。

 

大学院修士課程では卒業証書という言い方は適切ではありませんが、この留学生活を通じて得られた証がこの修了証書です。これに数百万円の価値が・・・と考えるよりも、金額では測ることのできないかけがえのないものを手に入れることができたと確信している自分がここにいます。

 

 

また、留学生活を通じ、痛切に感じたことは日本人留学生の減少傾向です。私が在籍していた 2007-2008年のスタンフォード大学の日本人大学院留学生数は68名でしたが、その10年前は200名ほどの日本人留学生が在籍していたようです。スタンフォード内の留学生数は確実に増えていて、その中でもアジア人の増加率が高いことが顕著なのですが、日本人留学生数は逆に減少しているのです。2007年当時のスタンフォードの留学生数の数を見ると、中国457名、インドは382名でした。人口の比率や国の勢いを見れば十分に納得できる人数だと思います。ところが驚くべき数字は、韓国からの留学生が363名もいたことです。韓国の人口は日本の半分以下にも関わらず、留学生は日本の3倍以上という有様でした。ちなみに台湾からの留学生でも117名います。日本の衰退を感じずにはいられませんでした・・・。

実際のところ、この傾向は実はスタンフォードだけに見られるものではありません。IIE(Institute of International Education)の調査によれば、2000年当時アメリカの大学・大学院へは46,000名もの日本人が留学していましたが、2010年にはその数は21,000名にまで減少しています。半分以下というこの減少率は大変気になるところです。

私は帰国後、進学留学指導を行う学校「アゴス・ジャパン」で働いています。この留学生減少の状況を鑑み、少しでも日本人留学生を送りだすことに貢献していけたらと考えています。昨今、右を見ても左を見ても「グローバル人材」という言葉が叫ばれていますが、今後グローバルに活躍していくためには「留学」はしたほうが良いというレベルではなく、もはや「必須」の経験ではないかと感じています。そしてそれは少しでも早い段階、考え方が柔軟なうちに海外体験をしておくべき必要があるのではないかと考えています。

 

日本の高校生・大学生くらいが、カリキュラムの一貫としてほぼ全員が在学中に海外体験ができるようなしくみづくりができたら理想かと思うのですが、実現へのハードルはまだまだ高いでしょう。本来は、周りが「そうしろ!」というのではなく、高校生・大学生たちが自ら「行きたい!」と手を上げるようにならなければ、真のグローバル化が進むことはないでしょう。

 

「内向きの若者」なんていう言葉をマスコミの記事上でよく目にしますが、若者達にはどんどん外を見て欲しいと思います。そしてどんどん失敗経験を積んで欲しいと思います。若いうちの失敗なんて失敗のうちに入りませんし、その失敗が必ず次回の成功への大きな糧になることは間違いありません。

 

私が個人的に好きなAKB48グループでも最近、秋元康氏がメンバーに対して「海外留学希望者」を募集開始し始めました。AKB48ファミリーは、今やSKE48(名古屋)、NMB48(大阪)、HKT48(博多)という国内姉妹グループのみならずTPE48(台北)、JKT48(ジャカルタ)など海外展開も盛んですが、秋元氏は国内のAKBメンバーたちに対し、海外のグループに留学することを推奨し始めたのです。私はこのアイディアに大賛成です。どんなに人気のあるトップメンバーであっても、日本以外のカルチャーを体験するのみならず現地のメンバーやファンとの交流を図ることで得られるメリットは絶大だと思います。

 

AKBでさえも世界を視野に入れているのです! 彼女たちのみならず、これからの日本を背負って立つ日本の若者達が、少しでも早いうちから海外体験を積み、世界を相手に活躍できるような状況になることを願ってやみません・・・。

 

これまで長い間、お付き合いいただき本当にありがとうございました。この連載が、これから留学を考える方々にとって何かしらのお役にたてたら幸いです。

 
 
 
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